天地のドラマ
<あはれいかに
草葉の露のこぼるらむ
あき風たちぬ宮城のの原>
(西行、山家集0013)
空を見上げて家内がポツンと言った。
<秋の雲ね・・・>。
そういえば高く澄んだ空に薄い雲が流れていく。
吹く風もそこはかとなく秋の匂いがした。
*
それにしても昨夜の嵐は本当にすごかった。
夜8時ごろであった。
にわかにかき曇って、夕立が来る気配がした。
わたしはバタバタと2階に上がり、開けていた窓を閉めようとふと外の暗闇を見た。
その瞬間である。
強い閃光がパッパッと光った。
家の前の双子山(ふたごやま)の全体が昼間のように光り輝いた。
山の木のひとつひとつが鮮明に見える。
それが2-3回繰り返された。
その時である。
ドドーン、ドドーン。
ガラガラー、ドカーン。
雷の音が響き渡る。
同時に家の電灯が消えた。
停電である。
家内が懐中電灯をもって2階まで上がって来た。
間もなく電灯は元通りについた。
でも雷光に照らされた双子山の姿。
その姿がわたしの心から離れない。
わたしは2階の部屋の電灯を消して、暗闇の中、もう一度、山の方をじっとみつめた。
そうすると今度は巨大な稲妻が山の斜面を裂くように走った。
2度、3度と稲妻が走る。
双子山の全体が強く照らされ、暗闇の中にポッカリと浮かび上がる。
1木1草がはっきりと見えるようである。
このような光景を見たのは生まれて初めである。
大地は女神である。
双子山は横たわる女神の乳房だ。
女神を貫く巨大な雷光は父なる天神。
次々と繰り返される天地の交わり。
厳かな天地のドラマがそこにあった。
わたしは唖然として息をのんで見つめていた。
激しい雷と雨の音を聴きながら。
*


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