一輪の花
庭の入り口に3メートル近いアオキがある。
青々と茂った大きな葉っぱ。
元気いっぱいのアオキである。
半年も前のある日の事である。
わたしはいつものようにアオキを見ていた。
その時、チラッと別の木が見えた。
良く見ると奥にもう一本の低木があるではないか。
アオキの木の陰で、太陽の光を受ける事が出来なかったのだろう。
殆ど葉っぱはなく、骨と皮だけのやつれ果てた姿であった。
わたしは早速、アオキの枝を払って太陽の光が奥の低木に当たるようにしてあげた。
そのうちに木は徐々に回復して葉を茂らせるようになった。
<何の木なのだろう>。
わたしは何度も心の中でつぶやいた。
葉には独特の艶(つや)がある。
特にその若葉は美しい。
明らかにアオキのゴツゴツした葉とは違う。
ある日、わたしは庭の小さい池の近くにある40cm位のクチナシの木を見ていた。
<これだ!>。
早速その葉っぱを一つ摘んで急いでアオキの奥の木の葉っぱと比べてみた。
ピッタリと同じ葉っぱである。
<クチナシの木だ!>。
わたしは心の中で叫んでいた。
それ以来、牛糞(ぎゅうふん)や枯れ草を木の根元にかけたりして、その木の世話をしてきた。
今日、庭の草取りをしながら、ふと頭を上げると、庭の入り口のアオキの木の近くに白いモノが見えた。
駆け寄って見ると、降り始めた小雨の中に真っ白い大きなクチナシの花が咲いていた。
でもわたしが知っているあの羽(はね)を広げたような形のクチナシの花とは違う。
<おかしいな・・・>。
本棚の植物図鑑を取り出して調べてみる事にした。
<クチナシ、クチナシ・・・>。
索引のクチナシのところを急いで開けてみる。
するとクチナシの花の写真の横に今見た花の写真が載っているではないか。
その名はオオヤエクチナシ。
こうしてわたしは遂に<大八重クチナシ>に出会う事ができたのである。
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